| 貧困解消めざし公正な貿易を求めよう! |
| 連載「貧困と貿易をめぐる問題について」第2回 世界貿易と多国籍企業(1) |
![]() 前回で、世界の富はかつてなく増大し、その大きな要因は世界の貿易の飛躍的拡大にある、と述べました。 その世界貿易を引っ張っている主なプレイヤーは、多国籍企業です。多国籍企業とは、その名の通り複数の国家に渡って事業経営を行う企業のことで、今日では大企業はおおむね多国籍化していると言ってよいでしょう。トヨタとかソニー等を見てみても日本にだけ会社・工場があるのではなく、トヨタアメリカとかソニーヨーロッパというように世界各国に会社・工場があります。 多国籍企業といわれている大企業は、世界で6万社を超えてありますが、そのうち90%が先進国の企業です。総売上は18兆5千億ドルで、世界の総生産のおおよそ半分を占め、最も規模の大きい100社の企業だけで4分の1を占めています(※1)。それがどの程度の規模かと言えば、多くの多国籍企業の年間売上高は、一国のGDP(国内総生産)をはるかに超えるまでになっているのです。例えば、従業員10万人ほどのエクソンモービル社の年間売上高は6,700万人の人口を抱えるトルコのGDPより大きく、ウォルマート社はオーストリアより大きく、ゼネラル・モータース社はペルーおよびアルジェリアよりも大きいのです。 さて、貿易と多国籍企業の関係に話を移しますと、世界の貿易の3分の1は多国籍企業の系列会社どうしの貿易です。つまり、松下電器(日本)は松下電器(中国)と貿易し、IBM(日本)はIBM(アメリカ)と貿易しているというように。これは本来の意味での貿易とは言い切れませんが、上記松下電器の例で言えば、日本と中国との貿易として統計上は処理されるのです(実際、税関を通しますので)。 世界貿易のもう3分の1は、多国籍企業どうしの貿易となっています。例えば、松下電器(中国)とIBM(日本)というように。あとの3分の1だけが、その国にしかない企業とか国営企業が参加する本来の意味での国家間の貿易です(※2)。 このように世界貿易の3分の2が多国籍企業によって担われているのです。 系列会社どうしの貿易とは、例えばM社のテレビを生産するのに、A国では液晶パネルだけを生産し、B国では電子回路だけを生産し、C国ではケースを生産し、そしてD国で最終組み立て行う、というように国をまたがって生産しようとするものです。つまり、高度な技術を要する部門、中程度の技術を要する部門、技術より労働力を要する(労働集約)部門等々、その国の技術力、資源力、商慣習(関税率ほか)などを総合的に判断し、もっとも効率的に生産するために行うのです。 今日対米輸出を飛躍的に拡大している中国ですが、貿易総額に占める外資系企業(多国籍企業)の比率は53%にも上ります(※3)。米国と中国との貿易摩擦は、実は米国と多国籍企業との摩擦といった方が、当を得ているかもしれません。かつて、1980年代に自動車や鉄鋼をめぐって日本と米国との激しい貿易摩擦がありました。これは日本の企業が日本国内から米国に輸出するという構図でした。今の中国は確かに中国国内から米国に輸出していますが、その半分以上は中国企業ではなく外国籍の多国籍企業だということです。 さて、世界貿易の主要なプレイヤーは多国籍企業であると言いました。世界の貿易ルールを決めるのが世界貿易機関(WTO)ですが、当然各国交渉の背後には自分たちに都合のよいルールを決めさせようとする多国籍企業の存在があります。世界各国すべてのセクターの企業を代表しているといわれる国際商工会議所(ICC)、大西洋をはさむ地域の多国籍企業の150人ほどの社長を結集している大西洋ビジネス対話(TABD)などがグローバルな形での多国籍企業側の結集体で、これらがWTOに、そして米国やEUに大きな影響を与えています。日本では日本経団連が日本の多国籍企業の結集体で、これも日本政府に大きな影響を与えています。 ※1 2002年国連資料より ※2 2001年UNCTAD(国連貿易開発会議)資料より ※3 2003年「中国統計年鑑」より 天津市でのハイテク製品輸出の例 |