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2005年09月27日

国連ミレニアム開発目標(MDG)「不平等」―ラテンアメリカにおける貧困の根源

引用元:JANJAN(IPS)

2005/09/26
【リオデジャネイロIPS=マリオ・オサヴァ、9月12日】
 ラテンアメリカでは、国連のミレニアム開発目標(MDG)の達成に向けて、域内各国はそれぞれに異なる進展を見せているが、富の不均衡な配分が今なお貧困の根源となっている。


 チリは、1990年の数値を基準点に極貧層を半減するというMDGの第一の目標を既に達成している。チリのリカルド・ラゴス大統領は5月施政方針演説で、チリの貧困率が1990年の38.5%から今年は18.8%に減少したことを発表した。極貧率は同期間に12.9%から4.7%に低下した。

 しかしアルゼンチンに関しては、2015年の期限までにこの目標を達成することは難しいだろう。1990年にはラテンアメリカでもっとも高い社会開発指標を記録した同国だが、2001年末の経済・金融危機でこの数年大きな痛手を負っている。

 また、富の配分の不平等が世界でもっとも著しいブラジルなどの諸国では、総人口の最富裕層20%の所得のうちわずか5%を最貧困層20%に移転すると、貧困率が現状の22%から7%に削減されるとの推定結果が、国連開発計画(UNDP)が9月7日に発表した『2005年人間開発報告書』に明らかにされた。すなわち、実質で、2,600万の人が貧困線以上の生活を送ることができるようになるという。

 2000年に加盟国191カ国によって採択されたMDGは、極貧と飢餓の撲滅、普遍的初等教育の達成、男女平等および女性の地位強化の推進、乳幼児死亡率の削減、妊産婦の健康の改善、HIV/AIDS・マラリア・その他疾病との闘い、環境の持続可能性確保、開発のためのグローバルなパートナーシプの推進に取り組むことを公約している。これらの目標は、2015年を目標達成年として定められた18の具体的なターゲットの実現と、48の指標による評価を基盤に、達成を目指すものである。ターゲットの実現に向けた進捗状況は、1990年を基準値に評価される。

 多くの南米諸国が、この10年間に社会政策一般に重点を置き始めた。しかし大方はMDG採択がもたらしたものではなく、多くの国で革新政権が誕生していることから明らかなように、域内の貧困の悪化に対する認識が深まり、それへの対応にほかならない。

 たとえば、貧困率と極貧率がそれぞれ1992年の22.6%と4.5%から経済危機のただ中の2002年には54%と27.7%に増加したアルゼンチンでは(国立統計院のデータによる)、2003年に発足したキルチネル政権が、食料配給や、失業世帯主への月額150ペソ(52ドル)の給付金など、多数の社会プログラムを導入した。穏やかながらも景気が回復に向かい、今ではこうしたプログラムに依存する人々の数は、220万から150万に減少している。この間さらに、中小企業42万5,000社への融資や、子どもたちの就学を支える目的での母親25万人への給付金を含む開発プログラムなど、他にも多岐にわたる取り組みが導入された。

 しかし、こうした所得補助プログラムは「大いに必要とされているものの、一時しのぎの対策に過ぎない。本当の解決策は雇用拡大にある」と、コミュニティ活動家マルセロ・クレスタはIPSの取材に応えて指摘する。クレスタは、ブエノスアイレス州にある教会Our Lady of Lujan de Quilmes Churchで子どもたちに給食サービスを行っているプロジェクトのコーディネーターを務めている

 チリでは、1990年の民政復活以来、社会政策を最優先に据え、17年間の軍政が残した負の遺産である貧困の克服に向け、全力を挙げている。一般市民からの要望や野党からの批判が、2002年に設置されたChile Solidarioなどのプログラムの導入につながった。Chile Solidarioは、所得補助とは対照的に雇用機会を提供することを目的とするもので、これまでに18万世帯がその恩恵を受けた。

 だが、域内の他の諸国と同様に、チリでも、所得配分の不均等は依然根強い。富裕層の若者が、たとえ私立学校で成績が悪くとも社会に出れば、その賃金は、公立学校でトップクラスの成績を収めて卒業した労働階級出身の若者の賃金よりも上だ、と指摘するのは、チリ大学の経済学者ダンテ・コントレーラスである。チリでは近年の努力にもかかわらず、「能力主義」が社会になかなか根付かず、不平等が今なお当然の事実なのだ。

 ブラジルでは、1990年代に、子どもたちが学校に通い続けられるよう世帯扶助の供与や、最貧困層への所得移転のためのその他メカニズムをはじめ、多数の社会プログラムが導入された。これらのプログラムは、左派ルイース・イナシオ・ルーラ・ダ・シルヴァ大統領が2003年1月の就任後直ちに実行に移した飢餓撲滅計画Zero Hungerが後押しとなって、さらに強化された。現在では700万世帯が月額最高95レアル(40ドル)の世帯扶助を受給しており、最終的には、2006年末までに1,120万世帯、すなわち弱者と分類されるすべての世帯に世帯扶助を支給することを目指している。

 飢餓撲滅計画は、食料援助、若者の識字訓練、農家畜産の奨励、干ばつ地域での雨水貯水タンクの建設など、貧困根絶に向けたさまざまな政策を包含する。その結果、ブラジルではこの10年間に社会指標が徐々に改善しており、あらゆる教育レベルにおける男女平等の解消など、MDGのいくつかの目標が既に達成された、とブラジルの国営機関である応用経済研究所(IPEA)のルイス・フェルナンド・レゼンデは強調する。

 とはいえ、ブラジルは、基本的衛生設備やサービスの利用など重要な領域において相変わらず立ち遅れており、これが5歳未満児の死亡率削減というMDGの達成の重大な障害となっていると、レゼンデはIPSの取材に応えて語った。

 ベネズエラでは、左派のウゴ・チャベス大統領が、過去最高の石油価格による望外の利益を背景に、2003年に数々の社会プログラムを導入した。現在、総人口2,600万人中1,500万人が国営のチェーンストアから補助価格で食料を購入しており、また教育分野では400万人にのぼるすべての年齢層の新入生のうち50万人が補助金や奨学金を受給している。さらにまた、ベネズエラでは、キューバの医師1万5,000人の協力を得て、貧困層数百万人に一次医療が提供された。

 MDGは、厳密に言えば、大半の南米諸国で導入された社会政策を生み出したわけではないが、しかし社会開発における進展を監視し、報告する上で役立ったことは確かだ。

 この一般則に当てはまらないのが、ウルグアイである。タバレ・バスケス大統領率いる左派の進歩会議・拡大戦線党は、政権樹立後直ちにMDGのターゲットの少なくともいくつかを達成することを明確に目標に掲げ、社会緊急国民支援計画(PANES)に着手した。

 かつてはその高度な社会発展故に「米州のスイス」とも言われたウルグアイは、近年、隣国アルゼンチンの経済危機と同じような経済危機に見舞われた。2002年には失業率が17%にも高騰し、賃金、輸出、外貨準備高は激減した。その結果、国民の33%が貧困線以下の生活を送っており、国民の8%に相当する27万6,000人が極貧の生活を余儀なくされている。総人口のおよそ半数が暮らす首都モンテビデオでは、1998年から2003年の間に貧困率が18%から31%に上昇した。

 PANESでは、困窮する世帯に月50ドル相当の所得補助を支給しており、また、職業訓練を行うとともに、4カ月間の就職を斡旋するプログラムWork for Uruguayを実施している。

 9月14~16日のニューヨーク国連本部での世界サミットでは、世界各国におけるMDG達成に向けた進捗状況について評価が行われるが、ラテンアメリカ諸国がミレニアム開発目標達成に至るまでには前途遼遠である。
<原文へ>

翻訳=坪沼悦子(Diplomatt)/IPSJ 竹山克則

(IPSJapan)

投稿者 ほっとけない*** : 2005年09月27日 11:06

 
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