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2005年08月12日
「ほっとけない 世界のまずしさ」キャンペーン 「2005ワールド・サミット」に向けたビジョン
「国連2005ワールド・サミット」を「ホワイトバンド・サミット」に
~「より平和で繁栄した公正な世界」の実現のために~
要約:9月「国連2005ワールド・サミット」で貧困問題の解決をめざそう
●9月14~16日に開催される国連特別総会「国連2005ワールド・サミット」(以下、「国連2005ワールド・サミット」)は、2000年に採択された「ミレニアム宣言」と「国連ミレニアム開発目標」の2015年の達成に向けて、これまでの歩みを評価するためのサミットです。
●日本では、「日本の常任理事国化」が主要な課題として取り上げられています。しかし、このサミットの本来の課題は「ミレニアム宣言」の進捗状況を評価し、その達成のための新たな戦略を作ることであり、「日本の常任理事国化」はこの全体的な課題の枠組みの中で議論されるべきことです。
●「2005ワールド・サミット」にあたって、私たちは「ミレニアム宣言」の内容に立ち戻るべきです。「ミレニアム宣言」は、「社会正義と公平性」の原則のもとに「より平和で繁栄した公正な世界」を作り出すことを目的とし、貧困に苦しむ世界の人々が欠乏から解放されることにコミットすると明記しています。「ホワイトバンド」は貧困問題の解決を求める世界の市民社会のシンボルですが、「ミレニアム宣言」の達成状況を評価するこのサミットは、まさに「ホワイトバンド・サミット」であると言えます。
●私たちはこのサミットに向けて、7月に英国で開かれたG8サミットで達成できなかった課題、つまり、貧困問題の解決のための援助の増額と質の向上、債務と貧困に苦しむ国々に対する債務救済の拡大、貿易の公正化などにより、2015年までに「国連ミレニアム開発目標」を達成し、「貧困のない世界」を作っていくことを世界の政治指導者たちに対して要求していく必要があります。
●日本はG8サミットに向けて、貧困削減のための拠出増大のプランをいくつか発表しましたが、いずれも、貧困問題の解決に向けた取り組みとしてはまだ不十分です。日本政府の政策が、「国連ミレニアム開発目標」の達成と「貧困のない世界」の創出に向けて、もっと適切なものになるよう、日本の市民社会は「ワールド・サミット」に向けて働きかけを強めていく必要があります。
*「ミレニアム宣言」については、以下のサイトをご覧下さい。
日本語版(外務省)
http://www.mofa.go.jp/mofaj/kaidan/kiroku/s_mori/arc_00/m_summit/sengen.html
英語版(国連人権高等弁務官事務所)
http://www.ohchr.org/english/law/millennium.htm
1.「2005ワールド・サミット」を「ホワイトバンド・サミット」に
今から5年前の2000年9月8日、世界の首脳たちがニューヨークに集まり、一つの宣言を採択しました。「ミレニアム宣言」と名付けられたその宣言には、「より平和で繁栄した公正な世界」の確立に向けて、世界各国の元首や政府首脳が、世界のすべての人々に責任を負っていることが明記されています。また、21世紀の国際関係における基本的な価値として「社会正義と公平性」(equity and social justice)がかかげられ、グローバルな課題については、この基本的な価値に従って、コストと負担が公平に分担されるような方法で取り組まなければならない、と明記されています。「ミレニアム宣言」は、途上国に対する援助の必要性について、以下のように明記しています:「被害を受けたり、恩恵がもっとも少ない人々には、もっとも恩恵が大きい人々からの助けを受ける資格がある」。
この宣言から5年。私たちの世界は、「より平和で繁栄した公正な世界」に一歩でも近づいたのでしょうか。「社会正義と公平性」が、21世紀をつらぬく基本原則になったのでしょうか。それを評価するために、来る9月14~16日の3日間、ニューヨークで、国連特別総会「国連2005ワールド・サミット」が開催されます。
■重要なポイント■
日本では、この「ワールド・サミット」や、9月を山場とする国連の動きについて、「日本の常任理事国化」だけが焦点であるかのような報道が多くなされています。しかし、このサミットはあくまで、「ミレニアム宣言」と「ミレニアム開発目標」の進み具合を評価し、未来に向けた新たな展望を出すためのものであり、「貧困のない安全な世界」を作り出すために、どう世界が協力するかを検討するためのものです。このサミットは、「ホワイトバンド・サミット」なのです。
2.世界の市民社会は「ホワイトバンド・サミット」を通じて何をめざすか
(1)具体的な成果に乏しかったG8サミット
「2005ワールド・サミット」に先立つこと2カ月、7月に英国グレンイーグルズで開催されたG8サミットは、アフリカ支援や気候変動問題が取り上げられるということもあって、貧困問題の解決に向けた第一歩になるのではないかと注目されました。実際、このサミットでは、会期中に前代未聞の「テロ」が生じるなど大きな危機にさらされたにも関わらず、これら二つの問題について、一定の討議がなされ、G8諸国がこれらの問題について真剣に取り組むことは確認されました。しかし、援助の増額や質の向上、債務削減、先進国の輸出補助金の撤廃など具体的な事項に関してはあまり前進が見られず、これらの課題は「ワールド・サミット」に持ち越されました。
(2)「ミレニアム宣言」はとても重要
貧困問題などのグローバルな問題について検討するには、主要国の首脳しか集まらないG8サミットよりも、多くの途上国の元首や首脳級が出席する「ワールド・サミット」の方がふさわしいと言えます。
この「ワールド・サミット」において、最初に確認されなければならないのは、「ミレニアム宣言」と「ミレニアム開発目標」の重要性です。「ミレニアム宣言」は先に述べたとおり、この世界が「社会正義と公平性」を基本的価値とする「より平和で繁栄した公正な世界」となることを目標として掲げています。貧困問題について、「ミレニアム宣言」は、すべての人類を欠乏から解放することへのコミットを表明しています。また、「ミレニアム宣言」は、すべての人類が尊厳を有し、飢餓から解放され、暴力・抑圧や不公正の恐怖から解放された生活を営み、次世代を育てていく権利を有する、と定めることによって、人間的な安全保障と、食料・水・保健医療・教育などの公共サービスへの平等なアクセスを実質的に保障しています。この「ミレニアム宣言」に基づいて、貧困のない世界に向けた指標として設定されたのが「国連ミレニアム開発目標」です。
この「ワールド・サミット」が、貧困のない世界への第一歩をなす「ホワイトバンド・サミット」となるために、最も重要なのは、この「ミレニアム宣言」の精神に立ち戻り、「国連ミレニアム開発目標」の実現に向けて世界が本当に歩みを進めているかどうかを具体的に検証することです。
■重要なポイント■
「国連ミレニアム開発目標」の最初に設定されているのが、「2015年までに1日1ドル未満で生活する人口比率を半減させる」という目標です。
これについては、世界の「1日1ドル未満」生活人口の多くを占めていた中国とインドが現在、高度経済成長を遂げていることから、世界全体でみれば、この目標が達成されるのではないかと言われています。しかし、一方でサハラ以南アフリカでは、「1日1ドル未満」で生活する人々の人口は増えています。ミレニアム宣言が「全人類を欠乏から解放する」ことへのコミットを明確に謳っている以上、この目標が、単に、世界レベルで「1日1ドル未満」で生きている人々の人口を半減させることだけを意味しているとは考えられません。大陸レベル・国レベルで極度の貧困状態で生きている人々の人口を半減させることができるかどうかという視点も重要です。また、残された貧困層の生活水準が以前より低下しているようであれば、元も子もありません。
この目標は、単に人口統計上のものではなく、あくまで、すべての人々が「悲惨で非人道的な極度の貧困から解放」されるためのステップとして設定されているものだということを再認識する必要があります。
(3)G8サミットで成し遂げられなかった目標の実現をめざそう
G8サミットでは、結局、アフリカなどの貧困地域の貧困問題の解決のために十分な額の援助を行うことや、重い債務を負った貧困国における債務救済を拡大することなどは、十分に実現されませんでした。
「ワールド・サミット」に向けて国連事務総長に提出された「ミレニアム・プロジェクト」の提言では、すべてのドナー国が2015年までにODAを自国の国民総所得(GNI)のO.7%まで増額すること、これには質の向上と、とくに低所得国へのODAの増大が伴わなければならないことを明記しています。具体的には「国連ミレニアム開発目標」の達成のための現実的なニーズに基づき、貧困削減のための戦略に沿ったものでなければならないことが明記されています。
しかし、この「0.7%目標」については、国際社会が全体としてこれを達成しようという意志が十分に示されてきませんでした。「ワールド・サミット」では、この「0.7%目標」を始めとする国際公約を必ず達成するのだという意志表明に加え、達成のための何らかの保障が担保されることが必要です。
また、G8サミットでは、既存の「重債務貧困国イニシアティブ」によって設定された諸条件をクリアした18ヶ国のみの債務免除が決定されました。しかし、債務免除された国々と同等、もしくはそれより厳しい貧困状況にある国で、債務免除が適わなかった国がいくつもあります。「貧困の実態」をベースとした債務免除が実現されるべきです。一方で、債務削減にあたって、これらの国の貧困削減に逆行するような、また公共サービスの後退につながるような条件付けを行うべきではありません。
HIV/AIDSを始めとする保健問題については、G8サミットの合意は、「2010年までの包括的なエイズ治療の実現」について、「この目標になるべく近づく」という文言が挿入され、6月のG7財務相会議のコミュニケよりも腰の引けたものになりました。基礎教育分野では、すでに「教育アクセスにおける男女格差の解消」という2005年までの目標が未達成となっているにもかかわらず、G8サミットでは「万人のための教育」の重要性を再認識することが表明されたのみで、具体的な新規支援額は示されませんでした。エイズや感染症、妊産婦・児童保健などについても、教育の普及についても、「ワールド・サミット」では、G8サミットよりも積極的なコミットメントがなされるべきです。
■重要なポイント■
G8サミットに向けては、ホワイトバンドをシンボルとして、世界の多くのNGO・市民社会が積極的な政策提言やアクションを展開しました。G8でアフリカ問題や気候変動問題が主要課題として取り上げられ、テロの発生にも関わらずこれらがしっかりと
議論されたのは、こうした市民社会による積極的なコミットによるものです。
「ワールド・サミット」に向けても、世界のNGO・市民社会は連携して、貧困問題の解決に向けて、世界の首脳への働きかけを実施することになります。日本に生きる私たちも、その一員として、G8サミットで実現されなかった諸課題を実現するために努力していくことが必要です。
3.「貧困問題の解決」に向け、日本が主要な役割を果たしていくために
(1)G8サミットに向けた日本政府の努力と限界点
日本は世界第2の経済力を持つ大国であり、世界の貧困問題の解決に向けて大きな責任を持っています。日本の市民社会には、日本政府がその責任を十全に果たしていくよう働きかける責任があります。
7月のG8サミットに向けて、日本政府は「国連ミレニアム開発目標」の達成に向け、一定規模の貢献策を発表しました。まず、4月にインドネシアで開催されたアジア・アフリカ首脳会議で、日本政府は今後3年間でアフリカ向け援助を倍増することを発表しました。また、保健に関しては、日本政府は6月に「保健と開発に関するイニシアティブ」を発表し、日本が「国連ミレニアム開発目標」の保健関係の目標達成に向けて、この5年間で50億ドルを拠出することを約束し、三大感染症への資金拠出のための多国間機関である「世界エイズ・結核・マラリア対策基金」についても、今後数年間で5億ドルを拠出することを約束しました。さらに、G8サミットで日本は、今後5年間で実質100億ドルのODA増額を行うことを約束しました。
しかし、日本政府は一方で、6月のG8財務相会議では、債務免除に強く反対するなど、債務問題に関しては一貫してG8の「ブレーキ役」になってきました。また、上記拠出についても、G8で約束した「5年間100億ドル増額」の多くが、以前から約束されていたイラク債務の免除などを含むものとなり、実質上、世界の貧困削減に十分に寄与するものとはならないのではないか、などの懸念も出されています。
(2)「貧困をなくすための取り組み」に日本から声をあげよう。
私たち日本の市民社会は、世界の貧困問題の解決のための日本の取り組みを拡大していくために、「ワールド・サミット」に向けて、日本政府に対する働きかけをしていく必要があります。具体的には、以下のことが挙げられるでしょう。
■援助の増額と質の向上
・日本政府は、ODAを国民総所得(GNI)のO.7%に引き上げるという国際目標について、まだ具体的な計画を示していません。「ワールド・サミット」に向けて、日本政府が0.7%目標などの国際公約を実現するための2015年までのスケジュールを打ち出すことが必要です。
・日本政府がG8サミットで打ち出した「今後5年間で合計100億ドルのODA増額」の方針については、イラク債務の放棄などを「100億ドル」の中に組み入れるという懸念を払拭し、世界の貧困問題の解決を焦点とした新規拠出を中心として組み立てられることが必要です。
■アフリカ向け援助政策
・4月のアジア・アフリカ会議で日本はアフリカ向け援助を3年間で倍増することを約束しましたが、これは、アフリカにおける「国連ミレニアム開発目標」の達成と強くリンクされることが必要であり、2008年以降についても、アフリカにおける「国連ミレニアム開発目標」達成に向けた日本のコミットメントを継続するという戦略が必要です。また、アフリカ向け援助がこれまで急速に減少してきた結果、2008年までに倍増しても、結局、1995年当時の水準に戻るだけに過ぎません。「国連ミレニアム開発目標」達成に向けて、アフリカが最大の困難を抱えている以上、アフリカ向けの援助はより積極的に増額されるべきです。
■債務救済にむけて積極的な姿勢を
・日本政府は、債務免除の対象国の拡大に対して常に消極的な態度をとってきましたが、こうした態度を改め、その国がおかれている貧困の状況をベースとした債務免除対象国の拡大を積極的に推進することが必要です。
4.「ワールド・サミット」を「ホワイトバンド・サミット」にするために
これまで見てきたとおり、私たちには、この2005年という年に、「社会正義と公平性」の原則のもとに「より平和で繁栄した公正な世界」を築くという「ミレニアム宣言」の実現に向けた第一歩を踏み出すために、この「ワールド・サミット」という機会を最大限活用していく必要があります。また、日本の市民社会には、日本が世界第2の経済大国として持っている責任を十全に果たさせていく、という役割があります。
「ワールド・サミット」まであと1カ月。私たちは、5年前に私たちの政府を始めとする各国の元首・首脳級が行った約束を果たさせていくために、最大限の努力を傾けていきたいと思います。
(以上)
投稿者 ほっとけない*** : 2005年08月12日 07:27

